青森県社会保険労務士会・八戸支部よりご依頼をいただき、2018年8月3日の研修会で、「ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件の最高裁判決を踏まえた実務対応」と題する講演をさせていただきました。

2018年6月1日、注目されていたハマキョウレックス事件と長澤運輸事件の最高裁判決が下されました。
ハマキョウレックス事件では正社員と契約社員(有期契約)との待遇格差について、長澤運輸事件では正社員と定年後再雇用された嘱託社員(有期契約)との待遇格差について、労働契約法20条に違反するか否かが主に争われました。
労働契約法20条では、有期契約労働者と無期契約労働者(正社員)との待遇格差が、職務の内容(業務の内容+責任の程度)、人材活用の仕組み(職務の内容・配置の変更範囲)、その他の事情を考慮し、不合理な相違であってはならないと定められています。

ハマキョウレックス事件の最高裁判決では、正社員のトラック運転手と契約社員のトラック運転手について、無事故手当、給食手当、皆勤手当などの支給格差が不合理であり、労働契約法20条に違反すると判断されました。
また、長澤運輸事件の最高裁判決では、正社員のトラック運転手と定年後再雇用された嘱託社員のトラック運転手について、精勤手当や超勤手当の支給格差が不合理であり、労働契約法20条に違反すると判断されました。
一方で、両最高裁判決において、不合理な支給格差であるとは言えず、労働契約法20条に違反しないと判断された支給項目もありました。

講演では、研修会にご参加されていた社会保険労務士の方々に対し、同一労働同一賃金に関する基礎知識と、ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件の各最高裁判決の解説に加え、両最高裁判決および最近の労働契約法20条関連の裁判例を踏まえた今後の実務対応のポイントについて、お話しさせていただきました。
労働契約法20条関連の各裁判例を読み解くに当たっては、「○○手当が違法」、「△△手当が適法」といった結論の部分だけに着目するのではなく、職務の内容(業務の内容+責任の程度)の相違の有無、人材活用の仕組み(職務の内容・配置の変更範囲)の相違の有無、争点となった支給項目および手当の趣旨、支給格差の根拠の如何などを含めて、どのような理由で適法・違法の判断が分かれたのかを丹念に分析していかなければなりません。

そして、労働契約法20条関連の各裁判例を踏まえた今後の実務対応としては、①正社員と非正規社員に適用される就業規則は、別個独立したものを作成し、②正社員と非正規社員との間で、職務の内容・責任の程度、職務の内容の変更範囲・配置の変更範囲について区別し、就業規則・職務分掌規程・職務権限規程などで明記したうえで、③諸手当の見直しを行うことのほか、④正社員と非正規社員との間で、人事評価項目に差を付け、明文化すること、⑤非正規社員から正社員へ登用されることが可能なシステムを創設することなどが考えられます。
今回の講演でお話しさせていただいた内容が、社会保険労務士の方々の顧問先・関与先企業へのご支援・ご提案おいて、少しでもお役に立てば幸いに思います。

【講演内容】
1 同一労働同一賃金に関する基礎知識
2 ハマキョウレックス事件最高裁判決の解説
3 長澤運輸事件最高裁判決の解説
4 今後の実務対応のポイント

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