内容
会社のお金を使い込んだ従業員への対応(その2)
今回は、前々回(Vol.21)のニュースレターで予告しましたとおり、使い込みをした従業員の労働関係上の問題について、解説させていただきます。
1 懲戒解雇できるか
会社のお金を使い込んだ従業員であれば、特別な理由がない限り、懲戒解雇が認められる場合の方が多いです。ただし、懲戒解雇をする場合には、就業規則に懲戒解雇の規定があることが必要です。また、懲戒解雇の規定があることだけでなく、就業規則が定める所定の手続(弁解の機会の付与など)を実施する必要があります。
就業規則がない場合や、懲戒解雇の規定がない場合には、その従業員との雇用関係を終了させるためには、任意に退職届(退職願)を提出させる方法が考えられます。
2 給与を支払わなくてもよいか
給与は、それまで働いた分については支給する義務があります。使い込みをしたからといって、働いた分の給与を支払わなくてもよいというわけではありません。
もっとも、使い込みをした従業員は、そのお金を会社に返還する義務がありますので、実質的に給与を支払わずに済ませる方法として、使い込んだお金と給与とを相殺する旨の合意を書面で取り交わす方法が考えられます。なお、その従業員に働かせたうえで、勝手に給与から天引きしてしまうことは、違法となるおそれが高いです。
3 退職金を支払わなくてもよいか
退職金は、就業規則に退職金規定が置かれているなど、退職金を支給する仕組みがある場合には、支払義務があります。ただし、退職金を支払う旨の規定のほかに、懲戒解雇の場合には退職金を支払わないといった規定があれば、退職金の支給をしないことも可能です。そのため、①そもそも退職金を支給する旨の規定があるかどうか、②その規定があるとして、一定の場合には退職金を支払わなくてもよいという規定がないかどうかを確認しましょう。
また、実質的に退職金を支給しないで済ませる方法として、使い込んだお金と退職金とを相殺する旨の合意を書面で取り交わす方法があることは、給与の場合と同様です。
使い込みをした従業員との労働関係上の問題においては、一つ対応を間違えると、逆に会社が責任を問われることにもなりかねません。従業員による使い込みの問題でお悩みの際は、解雇等を実施する前に、まずは当事務所にご相談いただければと存じます。
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