代表弁護士で温泉ソムリエの木村哲也です。
最近の休日は、青森県内各地の温泉によく足を運んでいます。
今回の日常コラムでは、温泉に関する法令等の知識・情報と、最近訪れた青森県内の温泉のご紹介を中心にお話させていただきます。
【目次】
1 入湯税と物価統制令
2 古牧温泉
3 温泉地の景観計画・景観形成
4 浅虫温泉(その2)
5 飲泉
6 湯野川温泉
7 温泉利用基準(水質基準を中心に)
(1)浴用の利用基準
(2)飲用の利用基準
8 おわりに
1 入湯税と物価統制令
温泉宿に宿泊すれば、宿泊代金とは別に入湯税の支払を求められるのが通常です。
また、日帰り温泉施設についても入湯税の課税対象となる場合がありますが、その場合には入湯税込みの総額が入浴料金として表示・請求され、入湯税の支払を別途求められる形はとられていないことが多いように見受けられます。
入湯税とは、温泉施設(鉱泉浴場)が所在する市町村が課する税金であり、温泉施設の経営者が入浴客から徴収し納税する仕組みになっています。
入湯税の使途は、環境衛生施設の整備、鉱泉源の保護管理施設の整備、消防施設その他消防活動に必要な施設の整備、観光の振興(観光施設の整備を含む)に要する費用にあてること、とされています。
入湯税の税率は1人1日150円が標準とされ、青森市・八戸市・弘前市を含むほとんどの市町村がこれにならっています。
ただし、ほとんどの自治体では入湯税の減免措置も同時に定めており、例えば青森市の条例(青森市市税条例)によれば、①年齢12歳未満の者、②共同浴場または一般公衆浴場に入湯する者、③市等が地域住民の福祉の向上を図ることを目的として設置した施設に入湯する者、④修学旅行または体育大会等に参加中の児童、生徒および学生並びにこれらの引率教員等で、所属学校の長の発行する修学旅行または体育大会等に参加する旨を証する書類等を有するもの、は入湯税の課税が免除されます。
公衆浴場・一般公衆浴場について入湯税の課税を免除する取り扱いは、ほとんどの市町村でとられています。
また、青森市の条例(青森市市税条例)によれば、一般公衆浴場以外の公衆浴場における入湯客については、入湯税の税率は1人1日75円とされています。
なお、弘前市の条例(弘前市税条例・弘前市税条例施行規則)によれば、入浴料金が1000円(税別)以下の入浴施設では入湯税の課税を免除するとされています。
入湯税の減免措置の内容は市町村により異なりますので、ここではこの程度の説明にとどめるものといたします。
※共同浴場とは、地元の人々が管理する温泉を利用した浴場です。
※公衆浴場とは、温泉等を使用し、公衆を入浴させる施設です。
※一般公衆浴場とは、利用の目的および形態が地域住民の日常生活において保健衛生上必要な施設として利用される公衆浴場であり、銭湯がこれに該当します。
※一般公衆浴場以外の公衆浴場とは、公衆浴場のうち、サウナ風呂、家族風呂、露天風呂、健康センター、スーパー銭湯などがこれに該当します。
次に、銭湯、つまり一般公衆浴場の入浴料金は、物価統制令という法令により、上限が決められているのをご存じでしょうか?
物価統制令によれば、一般公衆浴場の入浴料金は、都道府県知事が統制額(上限額)を指定することとされています。
そして、青森県における一般公衆浴場の入浴料金の統制額は、次のとおりとなります。
12歳以上の者(大人) | 480円(税込) |
6歳以上12歳未満の者(中人) | 170円(税込) |
6歳未満の者(小人) | 80円(税込) |
※令和5年(2023年)4月10日施行の統制額です。
このように、温泉を利用した一般公衆浴場の入浴料金は物価統制令による統制額が上限とされ、物価統制令に違反した場合には罰則の適用があります。
なお、物価統制令による統制額は一般公衆浴場について適用されるものであり、一般公衆浴場以外の入浴施設については適用対象外となります。
そのため、一般公衆浴場以外の入浴施設では、入浴料金を自由に設定することができます。
2 古牧温泉
古牧温泉は、三沢市にある温泉です。
昭和46年(1971年)、温泉観光開発を目的とする掘削により、地下約1kmから温泉が湧出したのが始まりです。
古牧温泉は2004年に経営破たんし、現在は星野リゾート様が経営を引き継いでいます。
2024年5月某日、古牧温泉を訪れました。
古牧温泉に来るのは今回が3回目であり、一軒宿である「星野リゾート 青森屋」様(以下、「青森屋」様と言います)に宿泊しました。
「青森屋」様の温泉は、宿の館内にある内湯「ひば湯」・露天風呂「浮湯」および宿から少し離れた敷地内にある「古牧温泉 元湯」で、とろみのある源泉かけ流しの湯を楽しむことができます。
湯の色は、無色透明です。
【浮湯】
※温泉の写真は「Amazing AOMORI」(青森県観光情報サイト)の無料写真ダウンロードにより入手したイメージ画像です。
【古牧温泉 元湯】
脱衣所の掲示によると、泉質は「アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)」です。
浴用の泉質別適応症・泉質別禁忌症は、以下のとおりです。
※本コラムにおける泉質名および適応症・禁忌症の記載は、平成26年7月1日改訂「鉱泉分析法指針」によります。
「青森屋」様の温泉は、宿の館内にある内湯「ひば湯」・露天風呂「浮湯」および宿から少し離れた敷地内にある「古牧温泉 元湯」で、とろみのある源泉かけ流しの湯を楽しむことができます。
湯の色は、無色透明です。
【浮湯】
※温泉の写真は「Amazing AOMORI」(青森県観光情報サイト)の無料写真ダウンロードにより入手したイメージ画像です。
【古牧温泉 元湯】
脱衣所の掲示によると、泉質は「アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)」です。
浴用の泉質別適応症・泉質別禁忌症は、以下のとおりです。
※本コラムにおける泉質名および適応症・禁忌症の記載は、平成26年7月1日改訂「鉱泉分析法指針」によります。
【浴用の泉質別適応症・泉質別禁忌症】
泉質別適応症 | 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態 |
泉質別禁忌症 | なし |
その他、アルカリ性の温泉は、古い角質を除去する美肌効果があるとされています。
「ひば湯」「浮湯」「古牧温泉 元湯」とも綺麗な浴場で雰囲気が良く、温泉入浴により身も心もリフレッシュすることができました。
特に「浮湯」は浴槽が池に張り出し、水に浮かんでいるような意匠であり、開放感の中でリラックスして温泉入浴を楽しむことができました。
そして、「青森屋」様のお食事は、朝夕に海と山の幸のビュッフェ料理を楽しみました。
【朝食】
【朝食】
3 温泉地の景観計画・景観形成
昔ながらの湯治場の風情や自然との調和など、温泉地の景観は大切に守っていかなければなりません。
景観に関わる我が国の法律として、「景観法」があります。
日本では、高度経済成長期以降、建築基準法や都市計画に違反しなければ、どのような形態の建築物も建てることができたため、地域ごとの調和・美観・伝統が失われていきました。
そこで、1990年代頃から、政府も景観に対する配慮・調和を重視するようになり、景観法が2004年6月に公布され、2005年6月に全面施行となっています。
景観法は、都市、農山漁村等における良好な景観の形成を図るため、良好な景観の形成に関する基本理念および国等の責務を定めるとともに、景観計画の策定、良好な景観の形成のための規制、景観整備機構による支援等所要の措置を講ずること、などが定められています。
そして、景観行政団体(都道府県や市町村)は、景観計画を策定し、景観計画区域内の建築等に関して届出・勧告による規制を実施するとともに、必要な場合には建築物等の形態・色彩・意匠などに関する変更命令を発することができる、とされています。
また、命令違反等に対する罰則が定められています。
例えば、青森市では、青森市景観条例・青森市景観条例施行規則により、青森市の良好な景観形成に関し必要な事項などが定められています。
そのうえで、「青森市景観計画」では青森市全域が景観計画区域とされ、例えば青森地区東部の方針は「自然環境の保全に努めるとともに、浅虫地区の情緒ある個性的な地域景観の形成に努めます」とされています。
そして、一定規模を超える建築等を届出対象とし、位置・規模および形態意匠、色彩・素材などの「青森市景観形成基準」が定められています。
「青森市景観計画」「青森市景観形成基準」の具体的内容のご説明は割愛いたしますが、青森市のウェブサイトで公開されていますのでご興味がありましたらご覧いただければと存じます。
4 浅虫温泉(その2)
浅虫温泉は、「弁護士の日常コラム」では2回目のご紹介となります。
【浅虫温泉駅前の足湯】
2024年5月某日、浅虫温泉を訪れ、「椿館」様に宿泊しました。
「椿館」様には過去にも宿泊したことがあり、今回は再訪となります。
【宿の外観】
宿泊客の減少が続く浅虫温泉では、3つの旅館が業績の立て直しのために官民ファンドから支援を受け、2024年4月19日に同時リニューアルオープンしました。
「椿館」様は、その3つの旅館のうちのひとつです。
【浅虫温泉駅前の足湯】
2024年5月某日、浅虫温泉を訪れ、「椿館」様に宿泊しました。
「椿館」様には過去にも宿泊したことがあり、今回は再訪となります。
【宿の外観】
宿泊客の減少が続く浅虫温泉では、3つの旅館が業績の立て直しのために官民ファンドから支援を受け、2024年4月19日に同時リニューアルオープンしました。
「椿館」様は、その3つの旅館のうちのひとつです。
「椿館」様は、明治9年(1876年)に明治天皇が東北行幸に際し休息所として入浴した由緒ある老舗旅館であり、世界的板画(版画)家である棟方志功(1903年~1975年)が毎年のように逗留し多くの作品を制作したことで知られています。
「椿館」様は400年余りの歴史を誇り、館内には明治天皇・棟方志功の資料・作品が展示されています。
今回のリニューアルにより、歴史と伝統の面影を残しながら、洗練された現代的な温泉宿に生まれ変わりました。
また、チェックイン時に抹茶と茶菓子が振る舞われるなど、サービスにも工夫がなされています。
それでは、温泉のご紹介をいたします。
「椿館」様の温泉は無色透明の源泉かけ流し温泉であり、脱衣所の掲示によると泉質は「ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性弱アルカリ性高温泉)」です(2021年の温泉成分分析。なお、それ以前の泉質は「単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)」でした)。
「硫酸塩泉」と「塩化物泉」の2つの効能を持ちます。
浴用の泉質別適応症・泉質別禁忌症は、以下のとおりです。
それでは、温泉のご紹介をいたします。
「椿館」様の温泉は無色透明の源泉かけ流し温泉であり、脱衣所の掲示によると泉質は「ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性弱アルカリ性高温泉)」です(2021年の温泉成分分析。なお、それ以前の泉質は「単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)」でした)。
「硫酸塩泉」と「塩化物泉」の2つの効能を持ちます。
浴用の泉質別適応症・泉質別禁忌症は、以下のとおりです。
【浴用の泉質別適応症・泉質別禁忌症】
泉質別適応症 | 【硫酸塩泉】 きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 【塩化物泉】 硫酸塩泉と同じ |
泉質別禁忌症 | 【硫酸塩泉】 なし 【塩化物泉】 なし |
その他、以下のような効能があるとされています。
①「硫酸塩泉」「塩化物泉」は、温泉の成分が肌に吸着しやすく保温・保湿効果が高いため、湯冷めしにくく湯上り後の肌の乾燥が抑制されるという特徴があるとされています。
②「硫酸塩泉」は肌を蘇生する美肌効果があるとされ、「美人の湯」の一つであると言われています。
③アルカリ性・弱アルカリ性の温泉は、古い角質を除去する美肌効果があるとされています。
この日は、「椿館」様の広々とした大浴場での入浴をのんびりと楽しみました。
なお、温泉(浴室)の写真は「椿館」様の公式サイトをご覧ください。
また、「椿館」様では、青森県内の温泉地で初めて飲泉の許可を得たとのことであり、飲泉を楽しむことができます。
飲泉所の掲示によると泉質は「単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)」であり(浴場の温泉とは源泉が異なります)、飲用の泉質別適応症はありません。
少し硫黄の香りがする薄味のだし汁のような不思議な味わいでした。
そして、「椿館」様のお食事は、旬の食材を使った手作りのお料理を美味しくいただきました。
【夕食】
※焼き魚は鱒です。
また、「椿館」様では、青森県内の温泉地で初めて飲泉の許可を得たとのことであり、飲泉を楽しむことができます。
飲泉所の掲示によると泉質は「単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)」であり(浴場の温泉とは源泉が異なります)、飲用の泉質別適応症はありません。
少し硫黄の香りがする薄味のだし汁のような不思議な味わいでした。
そして、「椿館」様のお食事は、旬の食材を使った手作りのお料理を美味しくいただきました。
【夕食】
※焼き魚は鱒です。
5 飲泉
飲泉とは、温泉を飲むことです。
温泉には、入浴だけでなく、飲むという利用方法もあります。
飲泉は、ヨーロッパ諸国では盛んに行われています。
一方で、日本でも古代から飲泉が行われてきたとする記録がありますが、実施されているケースはそれほど多くありません。
しかし、近年、飲泉所を設置している温泉地・温泉施設が徐々に増えてきています。
※浅虫温泉の公共の飲泉所は泉質が「ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性アルカリ性高温泉)」であり(「椿館」様の飲泉所とは源泉が異なります)、飲用の性質別適応症が胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘、萎縮性胃炎となります。硫黄の香りと、ほのかな塩気を感じる味わいでした。
温泉法では、温泉を公共の飲用に供する場合には、都道府県知事に申請し許可を受ける必要があります(温泉法15条1項)。
一方で、昔ながらの湯治場などでは、飲用の許可がないものの入湯客による飲泉が黙認されている例、入湯客が自己責任で温泉を飲用している例なども見られます。
※浅虫温泉の公共の飲泉所は泉質が「ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性アルカリ性高温泉)」であり(「椿館」様の飲泉所とは源泉が異なります)、飲用の性質別適応症が胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘、萎縮性胃炎となります。硫黄の香りと、ほのかな塩気を感じる味わいでした。
温泉法では、温泉を公共の飲用に供する場合には、都道府県知事に申請し許可を受ける必要があります(温泉法15条1項)。
一方で、昔ながらの湯治場などでは、飲用の許可がないものの入湯客による飲泉が黙認されている例、入湯客が自己責任で温泉を飲用している例なども見られます。
しかし、飲泉を実施する場合には、温泉を口から直接体内に摂取することになりますので、衛生面には特に注意しなければなりません。
必ず飲用の許可のあることを確認し、温泉分析書に記載の飲用の注意を守って飲泉を行うようにしましょう。
そして、平成26年7月1日改訂「鉱泉分析法指針」によると、飲用の泉質別適応症・含有成分別禁忌症は、以下のとおりです(浴用とは異なり、一般的適応症・一般的禁忌症・泉質別禁忌症はありません)。
【飲用の泉質別適応症】
泉質 | 飲用の泉質別適応症 |
単純温泉 | なし |
塩化物泉 | 萎縮性胃炎、便秘 |
炭酸水素塩泉 | 胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風) |
硫酸塩泉 | 胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘 |
二酸化炭素泉 | 胃腸機能低下 |
含鉄泉 | 鉄欠乏性貧血 |
酸性泉 | なし |
含よう素泉 | 高コレステロール血症 |
硫黄泉 | 耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症 |
放射能泉 | なし |
【飲用の含有成分別禁忌症】
含有成分 | 飲用の含有成分別禁忌症 |
ナトリウムイオンを含む温泉を1日(1200/A)×1000mLを超えて飲用する場合 | 塩分制限の必要な病態(腎不全、心不全、肝硬変、虚血性心疾患、高血圧など) |
カリウムイオンを含む温泉を1日(900/A)×1000mLを超えて飲用する場合 | カリウム制限の必要な病態(腎不全、副腎皮質機能低下症) |
マグネシウムイオンを含む温泉を1日(300/A)×1000mLを超えて飲用する場合 | 下痢、腎不全 |
よう化物イオンを含む温泉を1日(0.1/A)×1000mLを超えて飲用する場合 | 甲状腺機能亢進症 |
※Aは、温泉1kg中に含まれる各成分の重量(mg)を指します。
6 湯野川温泉
湯野川温泉は、むつ市にある温泉です。
下北半島の中央部、湯野川渓流に臨む山あいにあり、古くからの湯治場として知られています。
1674年(延宝2年)、泉竜寺(むつ市)の開祖である大英門突により発見されたと伝えられています。
2024年5月某日、湯野川温泉を訪れました。
湯野川温泉に来るのは今回が初めてであり、「寺島旅館」様に宿泊しました。
【宿の外観】
まずは、温泉のご紹介をいたします。
湯の色は無色透明であり、泉質は「アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)」です。
浴用の泉質別適応症・泉質別禁忌症は、以下のとおりです。
2024年5月某日、湯野川温泉を訪れました。
湯野川温泉に来るのは今回が初めてであり、「寺島旅館」様に宿泊しました。
【宿の外観】
まずは、温泉のご紹介をいたします。
湯の色は無色透明であり、泉質は「アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)」です。
浴用の泉質別適応症・泉質別禁忌症は、以下のとおりです。
【浴用の泉質別適応症・泉質別禁忌症】
泉質別適応症 | 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態 |
泉質別禁忌症 | なし |
その他、アルカリ性の温泉は、古い角質を除去する美肌効果があるとされています。
※温泉の写真はスタッフの方の許可を得て撮影しました。
「寺島旅館」様の湯は、癖が少なくやわらかな湯ざわりでした。
浴室の窓から見えるのどかな山あいの風景を眺めながら、のんびりと温泉入浴を楽しみました。
そして、「寺島旅館」様のお食事は、地元の山海の食材を使ったボリュームたっぷりの夕食を美味しくいただきました。
【夕食】
※焼き魚はタナゴ、煮魚はカレイ、揚げ物はイナダのフライ、蟹はトゲクリガニです。
※温泉の写真はスタッフの方の許可を得て撮影しました。
「寺島旅館」様の湯は、癖が少なくやわらかな湯ざわりでした。
浴室の窓から見えるのどかな山あいの風景を眺めながら、のんびりと温泉入浴を楽しみました。
そして、「寺島旅館」様のお食事は、地元の山海の食材を使ったボリュームたっぷりの夕食を美味しくいただきました。
【夕食】
※焼き魚はタナゴ、煮魚はカレイ、揚げ物はイナダのフライ、蟹はトゲクリガニです。
7 温泉利用基準(水質基準を中心に)
(1)浴用の利用基準
①水質基準
【公衆浴場における水質基準等に関する指針】
公衆浴場において使用する水の水質基準は、厚生労働省の「公衆浴場における水質基準等に関する指針」により、以下のとおりとされています。
項目 | 原湯・原水・上がり用湯・ 上がり用水 |
浴槽水 |
色度 | 5度以下 | - |
濁度 | 2度以下 | 5度以下 |
pH値 | 5.8~8.6 | - |
過マンガン酸カリウム消費量 | 10mg/L以下 | 25mg/L以下 |
大腸菌群 | 50mL中に検出されないこと | 1個/mL以下 |
レジオネラ属菌 | 検出されないこと(10cfu/100mL未満) |
※原湯とは、浴槽の湯を再利用せずに浴槽に直接注入される温水のことです。
※原水とは、原湯の原料に用いる水および浴槽の水の温度を調整する目的で、浴槽の水を再利用せずに浴槽に直接注入される水のことです。
※上がり用湯とは、洗い場およびシャワーに備え付けられた湯栓から供給される温水のことです。
※上がり用水とは、洗い場およびシャワーに備え付けられた水栓から供給される水のことです。
※浴槽水とは、浴槽内の温水のことです。
また、水質検査を所定の検査方法により以下の頻度で実施し、検査結果を3年間保管しなければなりません。
原湯・原水・上がり用湯・上がり用水 | 1年に1回以上 | |
浴槽水 | (ⅰ)ろ過器を使用していない浴槽水および毎日完全に換水している浴槽水 | 1年に1回以上 |
(ⅱ)連日使用している浴槽水 | 1年に2回以上(ただし、浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合には、1年に4回以上) |
項目 | 原湯・原水・上がり用湯・上がり用水 | 浴槽水 |
色度 | 5度以下 | - |
濁度 | 2度以下 | 5度以下 |
pH値 | 5.8~8.6 | - |
過マンガン酸カリウム消費量 | 10mg/L以下 | 25mg/L以下 |
大腸菌群 | 50mL中に検出されないこと | 1個/mL以下 |
レジオネラ属菌 | 検出されないこと(10cfu/100mL未満) |
※原湯とは、浴槽の湯を再利用せずに浴槽に直接注入される温水のことです。
※原水とは、原湯の原料に用いる水および浴槽の水の温度を調整する目的で、浴槽の水を再利用せずに浴槽に直接注入される水のことです。
※上がり用湯とは、洗い場およびシャワーに備え付けられた湯栓から供給される温水のことです。
※上がり用水とは、洗い場およびシャワーに備え付けられた水栓から供給される水のことです。
※浴槽水とは、浴槽内の温水のことです。
また、水質検査を所定の検査方法により以下の頻度で実施し、検査結果を3年間保管しなければなりません。
原湯・原水・上がり用湯・上がり用水 | 1年に1回以上 | |
浴槽水 | (ⅰ)ろ過器を使用していない浴槽水および毎日完全に換水している浴槽水 | 1年に1回以上 |
(ⅱ)連日使用している浴槽水 | 1年に2回以上(ただし、浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合には、1年に4回以上) |
【青森市・八戸市の条例・細則】
「公衆浴場における水質基準等に関する指針」を踏まえ、各自治体では条例・細則の整備が行われています。
青森市・八戸市の公衆浴場法施行条例・公衆浴場法施行細則では、水質基準が以下のとおり定められています。
なお、青森市・八戸市の旅館業法施行条例・旅館業法施行細則では、レジオネラ属菌が検出されないことという以外の水質基準の定めが見当たりませんでした(日帰り温泉施設には公衆浴場法関係法令、温泉宿には旅館業法関係法令が適用されます。日帰り温泉施設と温泉宿の浴場は水質基準が共通であるべきと考えられ、旅館業法施行条例・旅館業法施行細則にも以下と同等の水質基準が定められている自治体も多く見受けられます。青森市・八戸市の旅館業法施行条例・旅館業法施行細則も、本来ならばそのように定められていることが望ましいと考えられます)。
項目 | 浴槽水の原水・上がり用水 | 浴槽水 |
色度 | 5度 | - |
濁度 | 2度 | 5度 |
pH値 | 5.8~8.6 | - |
有機物・過マンガン酸 カリウム消費量 |
次のいずれかに適合したものであること。 (1)有機物(全有機炭素(TOC)の量):3mg/1L以下 (2)過マンガン酸カリウム消費量:10mg/L以下 |
次のいずれかに適合したものであること。 (1)有機物(全有機炭素(TOC)の量):8mg/1L以下 (2)過マンガン酸カリウム消費量:25mg/L以下 |
大腸菌 | 検出されないこと | 1個/1mL以下 |
レジオネラ属菌 | 検出されないこと |
また、レジオネラ属菌に係る浴槽水の水質検査を所定の検査方法により以下の頻度で実施し、検査結果を3年間保管しなければならないとされています。
浴槽水を塩素系薬剤により消毒し、毎日換水している場合 | 1年に1回以上 |
浴槽水を塩素系薬剤により消毒し、毎日換水していない場合 | 半年に1回以上(気泡発生装置等微小な水粒を発生させる装置を浴槽に設置している場合は、3月に1回以上) |
浴槽水を塩素系薬剤により消毒していない場合 | 3月に1回以上 |
そして、浴槽水を浴室(浴槽を除く)に備え付けられた給水栓に供給している場合は、所定の検査方法により3月に1回以上当該給水栓から供給される水のレジオネラ属菌に係る水質検査を実施し、検査結果を3年間保管しなければならないとされています。
また、貯湯槽および配管は、1年に1回以上生物膜の有無を点検し、生物膜があった場合は、その除去を行うこととされています。
②温泉利用施設の設備構造等に関する基準
環境省の「公共の浴用に供する場合の温泉利用施設の設備構造等に関する基準」では、1kg中に総硫黄を2mg以上含有する温泉(つまり、硫黄泉)を対象として、温泉利用施設の構造、浴室等の管理、立入禁止柵等の設置に関する基準が定められています。
まず、温泉利用施設の構造に関する基準として、硫化水素を原因とする事故の防止のため、次のような設備構造等とすることにより、浴室内の空気中の硫化水素濃度が一定の数値を超えないようにすること、とされています。
その設備構造等とは、所定の基準による換気孔等またはばっ気装置等を有する構造とすること、浴槽の湯面は浴室の床面より高くなるように設けること、浴槽への温泉注入口は浴槽の湯面より上方に設けること、とされています。
また、浴室等の管理に関する基準として、利用者の安全を確保するため、換気状態を十分に確認すること、都道府県知事または保健所を設置する市の市長が必要と認めたときは浴室内の空気中の硫化水素濃度の測定を所定の方法・回数により行うこと、とされています。
硫化水素濃度の測定結果の記録およびその保管なども定められています。
さらに、立入禁止柵の設置等に関する基準として、源泉における揚湯装置、湯畑その他のばっ気装置、パイプラインの排気装置、中継槽、貯湯槽等の管理者は、立入禁止柵、施錠設備、注意事項を明示した立札等を設けること、とされています。
そして、特に、総硫黄の含有量が多い温泉を利用し、または硫化水素濃度が高くなるおそれがある大規模な貯湯槽を使用する場合は、動力等による拡散装置等を設けることにより、硫化水素を原因とする中毒事故の防止に万全を期すこと、とされています。
(2)飲用の利用基準
環境省の「温泉利用基準(飲用利用基準)」では、一定の含有成分に関する飲用許容量の基準、利用者の安全衛生のための施設の管理等の基準、含有成分・水質の分析・検査の基準が定められています。
このうち、水質に関する基準は、以下のとおりです。
【飲用許容量】
大人(16歳以上の者)
①ひ素を含有する温泉水
飲用の総量:(0.1/A×1000)mL(1日につき)
成分の総摂取量:0.1mg
②銅を含有する温泉水
飲用の総量:(2.0/A×1000)mL(1日につき)
成分の総摂取量:2mg
③ふっ素を含有する温泉水
飲用の総量:(1.6/A×1000)mL(1日につき)
成分の総摂取量:1.6mg
④鉛を含有する温泉水
飲用の総量:(0.2/A×1000)mL(1日につき)
成分の総摂取量:0.2mg
⑤水銀を含有する温泉水
飲用の総量:(0.002/A×1000)mL(1日につき)
成分の総摂取量:0.002mg
⑥遊離炭酸を含有する温泉水
成分の総摂取量:1000mg(1回につき)
※Aは、温泉1kg中に含まれる各成分の重量(mg)を指します。
小人(15歳以下の者)
原則的には飲用を避けること。
ただし、例外的に引用する場合には、医師の指導を受けること。
【微生物】
一般細菌 | 1mL中の検水で形成される集落数が100以下であること。 |
大腸菌群 | 検出されないこと。 |
全有機炭素(TOC) | 5mg/L以下であること。 |
8 おわりに
今回は、青森県の3つの温泉のご紹介と、温泉に関する法令等の知識・情報を中心にお話しさせていただきました。
今後も引き続き、温泉に関する日常コラムを継続的に執筆・掲載して参ります。
記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2024年6月5日
※本コラムの記事内容は、記事更新日時点の法令・指針および温泉分析書の掲示等に基づくものです。記事更新日以降に法令・指針の改正・改訂および温泉成分の再分析等、その他事情の変更があった場合でも、記事内容の加筆・修正等を行うことは予定しておりません。あらかじめ、ご了承ください。
温泉記事の一覧
【執筆者:代表弁護士・木村哲也】
番号 | 年月日 | タイトル | 内容 |
---|---|---|---|
13 | 2024.10.23 | 代表弁護士の温泉紀行⑬ | 青森県の温泉その13 【温泉紹介】 ①大鰐温泉(その2)、②酸ヶ湯温泉(その2)、③梅沢温泉 【温泉解説】 ①温泉入浴と運動・食事・飲酒、②温泉と文化財、③蒸し湯、④泉質別の特徴と効能 |
12 | 2024.9.27 | 代表弁護士の温泉紀行⑫ | 青森県の温泉その12 【温泉紹介】 ①板留温泉、②落合温泉、③下風呂温泉(その2)、④新大秋温泉 【温泉解説】 ①温泉番付、②美人の湯、③子宝の湯、④湯めぐり、⑤温泉ソムリエマスター(その2) |
11 | 2024.8.29 | 代表弁護士の温泉紀行⑪ | 青森県の温泉その11 【温泉紹介】 ①嶽温泉(その2)、②温湯温泉、③平舘不老ふ死温泉 【温泉解説】 ①温泉地と名物グルメ、②温泉地と伝統工芸、③温泉地と文学、④温泉宿の後継者問題 |
10 | 2024.7.19 | 代表弁護士の温泉紀行⑩ | 青森県の温泉その10 【温泉紹介】 ①稲垣温泉、②五戸まきば温泉、③南田温泉 【温泉解説】 ①温泉権、②温泉地役権、③温泉環境権、④宇奈月温泉事件 |
9 | 2024.7.2 | 代表弁護士の温泉紀行⑨ | 青森県の温泉その9 【温泉紹介】 ①古遠部温泉、②相乗温泉、③寒水沢温泉 【温泉解説】 ①温泉偽装問題とは、②温泉偽装問題の影響、③近時の不祥事事例①温泉表示問題、④近時の不祥事事例②温泉の衛生問題 |
8 | 2024.6.19 | 代表弁護士の温泉紀行⑧ | 青森県の温泉その8 【温泉紹介】 ①百沢温泉、②三本柳温泉、③みちのく深沢温泉 【温泉解説】 ①かけ流し・循環のメリット・デメリット、②入浴前に体を洗うか?かけ湯をするだけか?、③頭にタオルを乗せる理由、④内風呂と露天風呂ではどちらに先に入るか? |
7 | 2024.6.5 | 代表弁護士の温泉紀行⑦ | 青森県の温泉その7 【温泉紹介】 ①古牧温泉、②浅虫温泉(その2)、③湯野川温泉 【温泉解説】 ①入湯税と物価統制令、②温泉地の景観計画・景観形成、③飲泉、④温泉利用基準(水質基準を中心に) |
6 | 2024.5.23 | 代表弁護士の温泉紀行⑥ | 青森県の温泉その6 【温泉紹介】 ①青荷温泉、②蔦温泉、③猿倉温泉 【温泉解説】 ①温泉入浴の効果、②温泉入浴の3大効果、③効果的な温泉入浴の回数、④温泉ソムリエマスター |
5 | 2024.5.9 | 代表弁護士の温泉紀行⑤ | 青森県の温泉その5 【温泉紹介】 ①大鰐温泉、②薬研温泉、③奥薬研温泉、④恐山温泉 【温泉解説】 ①温泉法が定めるルール、②公衆浴場法・旅館業法が定めるルール、③温泉の表示に関するルール、④温泉の衛生管理に関するルール、⑤温泉経営における法務リスク |
4 | 2024.4.17 | 代表弁護士の温泉紀行④ | 青森県の温泉その4 【温泉紹介】 ①嶽温泉、②湯段温泉、③城ヶ倉温泉 【温泉解説】 ①環境省「令和4年度温泉利用状況」、②嶽温泉の源泉問題、③基本的な入浴法(全身浴・半身浴・足浴など)、④入浴事故を防止するための入浴法 |
3 | 2024.4.3 | 代表弁護士の温泉紀行③ | 青森県の温泉その3 【温泉紹介】 ①黄金崎不老ふ死温泉、②鯵ヶ沢温泉、③上北さくら温泉、④東北温泉 【温泉解説】 ①温泉の色、②湯の花、③温泉のにおい、④温泉の湯ざわり、⑤温泉の温度 |
2 | 2024.3.26 | 代表弁護士の温泉紀行② | 青森県の温泉その2 【温泉紹介】 ①下風呂温泉、②酸ヶ湯温泉、③奥入瀬渓流温泉 【温泉解説】 ①天然温泉と人工温泉、②温泉はどうやってできるか?、③源泉・元湯・引湯・かけ流し・循環について、④温泉ソムリエ検定 |
1 | 2024.2.6 | 代表弁護士の温泉紀行① | 青森県の温泉その1 【温泉紹介】 ①浅虫温泉、②谷地温泉 【温泉解説】 ①温泉とは、②温泉むすめ、③温泉ソムリエ |
●HOME ●弁護士紹介 ●お客様の声 ●弁護士費用 ●アクセス