代表弁護士で温泉ソムリエの木村哲也です。
最近の休日は、青森県内各地の温泉によく足を運んでいます。
今回の日常コラムでは、温泉に関する様々な知識・情報と、最近訪れた青森県内の温泉のご紹介を中心にお話させていただきます。
【目次】
1 環境省「令和4年度温泉利用状況」
2 嶽温泉
3 嶽温泉の源泉問題
4 湯段温泉
5 基本的な入浴法(全身浴・半身浴・足浴など)
(1)全身浴
(2)半身浴
(3)寝浴(寝湯)
(4)浮遊浴
(5)足浴(足湯)
(6)手浴(手湯)
(7)分割浴(反復浴)
6 城ヶ倉温泉
7 入浴事故を防止するための入浴法
8 おわりに
1 環境省「令和4年度温泉利用状況」
環境省では、温泉に関するデータが公表されており、「温泉利用状況」はその一つです。
「温泉利用状況」では、都道府県別の温泉地数、源泉数、湧出量などのデータを確認することができます。
以下のとおり、「令和4年度温泉利用状況」(令和5年3月末現在)をもとに、温泉地数、源泉総数、湧出量合計のベスト10を表にまとめました。
【温泉地数】全国計:2,879
順位 | 都道府県 | 温泉地数 |
1 | 北海道 | 230 |
2 | 長野県 | 194 |
3 | 新潟県 | 142 |
4 | 福島県 | 127 |
5 | 青森県 | 125 |
6 | 静岡県 | 118 |
7 | 秋田県 | 117 |
8 | 群馬県 | 96 |
9 | 鹿児島県 | 87 |
10 | 岩手県 | 83 |
10 | 千葉県 | 83 |
【源泉総数】全国計:27,932
順位 | 都道府県 | 源泉総数 |
1 | 大分県 | 5,090 |
2 | 鹿児島県 | 2,738 |
3 | 北海道 | 2,229 |
4 | 静岡県 | 2,209 |
5 | 熊本県 | 1,334 |
6 | 青森県 | 1,087 |
7 | 長野県 | 959 |
8 | 福島県 | 801 |
9 | 宮城県 | 742 |
10 | 栃木県 | 631 |
【湧出量合計】全国計:2,515,272リットル/分
順位 | 都道府県 | 湧出量(リットル/分) |
1 | 大分県 | 295,708 |
2 | 北海道 | 196,262 |
3 | 鹿児島県 | 175,145 |
4 | 青森県 | 138,559 |
5 | 熊本県 | 129,962 |
6 | 岩手県 | 112,081 |
7 | 静岡県 | 110,495 |
8 | 長野県 | 104,716 |
9 | 秋田県 | 88,416 |
10 | 福島県 | 77,379 |
上記の表からすると、青森県は、温泉地数が全国第5位、源泉総数が全国第6位、湧出量合計が全国第4位と、屈指の温泉県であることが分かります。
一方で、「令和4年度温泉利用状況」によると、青森県は、動力湧出量が全国第3位に対し、自噴湧出量が10位以内には入っていません。
自噴湧出とは温泉が自然に地表に湧き出しているもの、動力湧出とはポンプなどの動力装置により温泉をくみ上げているものであり、青森県では自噴湧出の比率が低く動力湧出の比率が高いと言えます。
2 嶽温泉
嶽温泉は、弘前市にある温泉です。
岩木山のふもと(標高約450m)に位置し、約350年の歴史を誇る温泉街には昔ながらの湯治場の風情が色濃く残ります。
延宝2年(1674年)、薪切りに出かけた百沢村の野呂長五郎という木こりが昼飯の包みを盗んだキツネを追いかけました。
そして、キツネは包みを雪穴に落として逃げ去ったところ、雪穴の中に温泉が湧き出しているのを発見した、と伝えられています。
一方で、津軽藩の4代藩主である津軽信政により開湯されたという伝承もありますが、一国の殿様がわざわざ危険を冒して岩木山の山中に分け入り、温泉を発見したとの説には無理がある、という指摘もあります。
2024年4月某日、嶽温泉を訪れました。
嶽温泉に来るのは今回が初めてであり、「縄文人の宿」様に宿泊しました。
「縄文人の宿」様に到着すると、まずは温泉入浴を楽しみました。
「縄文人の宿」様に到着すると、まずは温泉入浴を楽しみました。
※温泉の写真はスタッフの方の許可を得て撮影しました。
「縄文人の宿」様の館内に掲示される2023年11月17日付け温泉分析書によると、泉質は「酸性-カルシウム・アルミニウム-塩化物・硫酸塩泉(低張性酸性温泉)」であり、「酸性泉」「塩化物泉」「硫酸塩泉」の効能を持ちます。
なお、上記の日付以前の温泉分析書では、「酸性・含硫黄-カルシウム-塩化物泉(低張性酸性高温泉)」との表示であり、泉質が変化していることが分かります。
浴用の適応症・禁忌症は、次のとおりです。
※本コラムにおける泉質名および適応症・禁忌症の記載は、平成26年7月1日改訂「鉱泉分析法指針」によります。
※温泉の写真はスタッフの方の許可を得て撮影しました。
「縄文人の宿」様の館内に掲示される2023年11月17日付け温泉分析書によると、泉質は「酸性-カルシウム・アルミニウム-塩化物・硫酸塩泉(低張性酸性温泉)」であり、「酸性泉」「塩化物泉」「硫酸塩泉」の効能を持ちます。
なお、上記の日付以前の温泉分析書では、「酸性・含硫黄-カルシウム-塩化物泉(低張性酸性高温泉)」との表示であり、泉質が変化していることが分かります。
浴用の適応症・禁忌症は、次のとおりです。
※本コラムにおける泉質名および適応症・禁忌症の記載は、平成26年7月1日改訂「鉱泉分析法指針」によります。
【浴用の適応症】
一般的適応症 | 筋肉もしくは関節の慢性的な痛みまたはこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息または肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進 |
泉質別適応症 | 【酸性泉】 アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症 【塩化物泉】 きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 【硫酸塩泉】 塩化物泉と同じ |
【浴用の禁忌症】
一般的禁忌症 | 病気の活動期(特に熱のあるとき)、活動性の結核、進行した悪性腫瘍または高度の貧血など身体衰弱の著しい場合、少し動くと息苦しくなるような重い心臓または肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気、消化管出血、目に見える出血があるとき、慢性の病気の急性増悪期 |
泉質別禁忌症 | 【酸性泉】 皮膚または粘膜の過敏な人、高齢者の皮膚乾燥症 【塩化物泉】 なし 【硫酸塩泉】 なし |
その他、以下のような効能があるとされています。
①「塩化物泉」「硫酸塩泉」は、温泉の成分が肌に吸着しやすく保温・保湿効果が高いため、湯冷めしにくく湯上り後の肌の乾燥が抑制されるという特徴があるとされています。
②「硫酸塩泉」は肌を蘇生する美肌効果があるとされ、「美人の湯」の一つであると言われています。
「縄文人の宿」様では、41度~42度弱のあつ湯、38度~40度弱のぬる湯の2つの浴槽があり、交互に入浴することにより体の芯から温まることができます。
泉質の変化により硫黄が弱くなり「硫黄泉」の基準値を下回っていますが、それでも相当の硫黄が含まれているため、青白い湯と独特の香りをしっかりと感じることができました。
「縄文人の宿」様に滞在中、夕食前・就寝前・起床後の3回、入浴を楽しみました。
そして、「縄文人の宿」様はお食事も素晴らしく、海の幸の炉端焼きと手作りのお料理の数々を美味しくいただきました。
※天ぷらのように見えるものはフリットであり、嶽きみのフリットが入っていました。
※緑色のソースに彩られた魚はエゾメバルであり、ソースには青森県産の春菊が使用されていました。
【朝食】
※天ぷらのように見えるものはフリットであり、嶽きみのフリットが入っていました。
※緑色のソースに彩られた魚はエゾメバルであり、ソースには青森県産の春菊が使用されていました。
【朝食】
3 嶽温泉の源泉問題
嶽温泉では、2022年12月、冬場を支えていた高温の源泉の温度と湯量が低下する異変に見舞われたとして、メディアにより大々的に報じられました。
嶽温泉では、2022年12月、冬場を支えていた高温の源泉の温度と湯量が低下する異変に見舞われたとして、メディアにより大々的に報じられました。
嶽温泉郷では、複数の源泉をブレンドし、各温泉に供給しています。
それぞれ温度が異なるのですが、冬場を支えていた源泉から引かれる湯の温度が10度程度低下し、湯量も相当減少する事象が発生しました。
そして、一部の旅館がこの問題のために一時休業を余儀なくされ、さらに各旅館は報道による風評被害のため営業に影響を受けました。
この問題に関し、嶽温泉の現地で詳しくお話をお聞きすることができましたので、ご報告いたします。
まず、嶽温泉郷では、自然湧出する複数の自噴源泉と、動力装置により温泉をくみ上げる動力源泉とをブレンドし、各旅館に供給しています。
このうち問題となった源泉は、動力源泉でした。
この動力源泉は温度が高いため、冬場の温泉の稼働を支えるものでした。
そして、元々枯れることが少ないと言われる自噴源泉とは異なり、元々一定の年限があることも少なくないと言われる動力源泉の寿命を迎えたことが、今回の騒動の発端であるとのことです。
しかし、その後は問題となった源泉の使用を停止しており、別の源泉を活用するなどの対策を講じることにより、一部の旅館が一時休業したことを除いて各旅館では通年営業を行うことができているとのことです。
このように、昔ながらの自噴源泉の使用により営業はおおむね維持されているのであり、嶽温泉郷全体の源泉が枯れたり、旅館全体の営業が困難になったりしたわけではないとのことです。
一方で、嶽温泉における源泉の変調は今回に始まったものではなく、温泉郷の永続のための模索はこの先も続くであろうと言います。
重要なポイントとしては、嶽温泉では今回の騒動と同種のものを含む様々な問題を乗り越えながら、温泉郷として永きにわたる歴史を刻んできたということです。
今回の問題についても、温泉として致命的な異変に見舞われたものとは到底言えず、風評被害の面が強いとのことです。
ここで、このように源泉の温度と湯量が低下するなどの事象が全国各地で発生していることについても、触れておきます。
その原因としては、高度経済成長期(1955年~1973年)以降に全国で温泉地が急増し、動力装置により温泉を大量にくみ上げるようになったことなどが指摘されています。
温泉を過剰にくみ上げることにより、一帯の源泉が疲弊・枯渇し、源泉の温度・湯量の低下などをきたすというわけです。
温泉もまた限りある資源の一つであり、持続可能な形での活用が求められると言えるでしょう。
そして、このような源泉の疲弊・枯渇問題が話題となった時期に偶然重なったことも、嶽温泉の源泉問題が大々的に報道されることに繋がったと言います。
しかし、今回の嶽温泉の源泉問題の発端は、上記によれば、温泉を過剰にくみ上げたことにより温泉郷全体の源泉が疲弊・枯渇したというものではなく、あくまでも動力源泉の一つが寿命を迎えたという事象です。
すなわち、嶽温泉では、温泉郷全体の複数の源泉に重大な異変が生じたというわけではなく、複数あるうちの一つの源泉の問題にとどまっているということに注意しなければなりません。
なお、源泉の温度・湯量や泉質については、数十年単位の周期的な変動があることも多く(温泉は自然の恵みであり、常に一定ではなく変化しています)、嶽温泉のような火山性の温泉の場合には火山活動の影響も考えられるため、源泉の変調などがあった場合でも原因を一つに絞ることは困難なことも多いと言われています。
嶽温泉の今回の問題にも実は複数の要因が絡んでいるとのことですが、すべてを語り尽くそうとすると文章量が膨大なものとなりますので、この程度の説明にとどめたいと存じます。
嶽温泉は、江戸時代から続く人気の温泉です。
降りかかる課題を乗り越え、末永く存続することを願ってやみません。
繰り返しますが、嶽温泉では、本コラムの執筆時点において、各旅館で通年営業が継続されています。
皆さまもぜひ嶽温泉に足を運ばれまして、素晴らしい湯を楽しんでいただければと存じます。
4 湯段温泉
湯段温泉は、弘前市にある温泉です。
活火山である岩木山からは、火山活動により温泉が複数湧き出しており、湯段温泉もその一つです。
享保9年(1724年)、賀田村(岩木町)の柴田長兵衛が発見しました。
約1.5kmの距離にある嶽温泉とともに、江戸時代から続く湯治場として知られています。
2024年4月某日、湯段温泉を訪れました。
湯段温泉に来るのは今回が初めてであり、「ゆだんの宿」様に宿泊しました。
【宿の館内】
まずは、温泉入浴です。
【宿の館内】
まずは、温泉入浴です。
※温泉の写真はスタッフの方の許可を得て撮影しました。
「ゆだんの宿」様の館内掲示によると、泉質は「ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉(等張性中性高温泉)」であり、塩化物泉と炭酸水素塩泉の効能を持ちます。
浴用の適応症・禁忌症は、次のとおりです。
※温泉の写真はスタッフの方の許可を得て撮影しました。
「ゆだんの宿」様の館内掲示によると、泉質は「ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉(等張性中性高温泉)」であり、塩化物泉と炭酸水素塩泉の効能を持ちます。
浴用の適応症・禁忌症は、次のとおりです。
【浴用の適応症】
一般的適応症 | 筋肉もしくは関節の慢性的な痛みまたはこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息または肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進 |
泉質別適応症 | 【塩化物泉】 きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 【炭酸水素泉】 きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症 |
【浴用の禁忌症】
一般的禁忌症 | 病気の活動期(特に熱のあるとき)、活動性の結核、進行した悪性腫瘍または高度の貧血など身体衰弱の著しい場合、少し動くと息苦しくなるような重い心臓または肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気、消化管出血、目に見える出血があるとき、慢性の病気の急性増悪期 |
泉質別禁忌症 | 【塩化物泉】 なし 【炭酸水素泉】 なし |
その他、以下のような効能があるとされています。
①「塩化物泉」は、温泉の成分が肌に吸着しやすく保温・保湿効果が高いため、湯冷めしにくく湯上り後の肌の乾燥が抑制されるという特徴があるとされています。
②「炭酸水素塩泉」は古い角質を除去する美肌効果があるとされ、「美人の湯」の一つであると言われています。
温泉の色は緑がかった薄濁りの湯であり、においは少し金気臭(鉄さびのにおい)を感じました。
仕事の疲れが癒され、体がよく温まりました。
そして、「ゆだんの宿」様のお食事は、採れたての山菜を使ったお膳料理を美味しくいただきました。
また、山菜以外にも、特に夕食では焼き魚、牛肉の鍋、釜めしなど盛りだくさんのお料理でした。
※焼き魚は鮎です。
【朝食】
※焼き魚は鮎です。
【朝食】
5 基本的な入浴法(全身浴・半身浴・足浴など)
温泉の基本的な入浴法として、全身浴・半身浴・足浴など様々なものがありますので、以下でご説明いたします。
(1)全身浴
肩まで浸かる一般的な入浴法です。
温泉を気持ちよく楽しめる基本的な入浴スタイルであると言えます。
効果的に薬理作用を得るためには全身浴が有効であり、消費カロリーが大きくダイエット効果も期待できます。
一方で、心臓に負担がかかり、のぼせやすいというデメリットもあります。
(2)半身浴
みぞおちから下の半身だけ浸かる入浴法です。
下半身から薬理効果を得られ、上半身からの発汗を促進しながら、心臓に対する負担が小さいという利点があります。
(3)寝浴(寝湯)
浅い風呂に首から下を温泉に浸け、寝た状態で温泉に浸かる入浴法です。
全身浴の気持ち良さと効果的な薬理作用を得られながら、心臓に対する負担が小さいという利点があります。
寝てしまって必要以上の長湯になることには注意する必要があります。
また、下半身に対する水圧は小さいため、ポンプアップ効果によるむくみの改善には、全身浴、半身浴、浮遊浴の方が効果的です。
当然ながら寝浴を行うためには、寝浴が可能な風呂の構造であることが必要です。
(4)浮遊浴
浴槽の縁に頭を乗せ、膝を曲げて足の裏を浴槽に付け、体が浮いたような状態を作る入浴法です。
心臓がより水面に近くなるため、心臓に対する負担が小さいです。
一方で、肩から湯に浸かることができるため、全身浴の気持ち良さと効果的な薬理作用を得られますし、足には水圧がかかるため、ポンプアップ効果によるむくみの改善にもなります。
(5)足浴(足湯)
足(膝下)だけを温泉に浸ける入浴法です。
足浴・手浴では、心臓に負担をかけずに温熱効果や薬理効果を得ることができますし、怪我・病気などで入浴できない場合にも有効です。
また、足浴には、衣服を着用したままで、読書・会話などをしながら入浴できるというメリットもあります。
足(膝下)だけを温泉に浸ける入浴法です。
足浴・手浴では、心臓に負担をかけずに温熱効果や薬理効果を得ることができますし、怪我・病気などで入浴できない場合にも有効です。
また、足浴には、衣服を着用したままで、読書・会話などをしながら入浴できるというメリットもあります。
そして、温冷交互浴を行う場合には、足浴で行うのがよいでしょう。
温冷交互浴とは、温水入浴3分程度と冷水入浴1分程度(大変冷たければ数秒程度でもよい)を交互に3~5回繰り返すことです。
温冷交互浴により末梢血管が拡張し、血行が良くなるため、乳酸などの疲労物質や老廃物を排出しやすくなり、疲労回復に大きな効果があります。
血液中の老廃物を体外に排出するためには、水分を多く摂ることが大切です。
(6)手浴(手湯)
手(と前腕)だけを温泉に浸ける入浴法です。
たらいのような器を使用する方法が一般的です。
手だけでも5~10分程度湯に浸ければ全身が温まり、42度程度の湯に5分程度浸けるのが一般的です。
手浴だけでも血行が良くなり、筋肉疲労や冷え性が改善されることがあります。
(7)分割浴(反復浴)
短い時間入浴したあと、浴槽のそばで休憩したうえで、また入浴を繰り返す入浴法です。
心拍数を急上昇させることなく血流量をアップさせ、体の負担を抑えることが可能です。
【40度以下】
①足先など心臓の遠くの体の末端から順にかけ湯。
②5分間の入浴(慣らす)。
③3分間の休憩。
④8分間の入浴(じっくり浸かる)。
⑤3分間の休憩。
⑥3分間の入浴(軽く仕上げる)。
※夏は38度、冬は40度が、リラックス効果が高まる。
【42度程度】
①足先など心臓の遠くの体の末端から順にかけ湯。
②3分間の入浴(短く浸かる)。
③3~5分間の休憩。
④3分間の入浴(短く浸かる)。
⑤3~5分間の休憩。
⑥3分間の入浴(短く浸かる)。
6 城ヶ倉温泉
城ヶ倉温泉は、青森市にある温泉です。
八甲田山中にあり、昭和40年(1965年)に開湯しました。
2024年4月某日、城ヶ倉温泉を訪れました。
城ヶ倉温泉に来るのは今回が初めてでした。
城ヶ倉大橋の近くにある一軒宿「ホテル城ヶ倉」様に宿泊しました。
まずは、温泉をご紹介いたします。
「ホテル城ヶ倉」様では、内湯は循環・ろ過が行われており、露天風呂は源泉かけ流しです。
【温泉】
※温泉の写真はスタッフの方の許可を得て撮影しました。
「ホテル城ヶ倉」様の館内掲示によると、泉質は「単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)」です。
浴用の適応症・禁忌症は、次のとおりです。
まずは、温泉をご紹介いたします。
【温泉】
※温泉の写真はスタッフの方の許可を得て撮影しました。
「ホテル城ヶ倉」様の館内掲示によると、泉質は「単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)」です。
浴用の適応症・禁忌症は、次のとおりです。
【浴用の適応症】
一般的適応症 | 筋肉もしくは関節の慢性的な痛みまたはこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息または肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進 |
泉質別適応症 | 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態 |
【浴用の禁忌症】
一般的禁忌症
|
病気の活動期(特に熱のあるとき)、活動性の結核、進行した悪性腫瘍または高度の貧血など身体衰弱の著しい場合、少し動くと息苦しくなるような重い心臓または肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気、消化管出血、目に見える出血があるとき、慢性の病気の急性増悪期 |
泉質別禁忌症 | なし |
その他、アルカリ性・弱アルカリ性の温泉は、古い角質を除去する美肌効果があるとされています。
「ホテル城ヶ倉」様は八甲田のブナ原生林に囲まれ、露天風呂では渓流のせせらぎが聞こえます。
八甲田の大自然を眺めながら、のんびりと温泉入浴を楽しむことができました。
そして、「ホテル城ヶ倉」様のお食事は、夕食では青森の山海の幸を使った懐石料理、朝食ではビュッフェを美味しくいただきました。
7 入浴事故を防止するための入浴法
温泉入浴においては、入浴事故にも注意しなければなりません。
2023年の全国の交通事故による死亡者数は、2678人でした。
一方で、入浴中や入浴が原因で亡くなる人は、年間で約2万人にのぼると推計されています。
このような入浴事故の多くは、高齢者が冬に熱い風呂に入浴することにより発生しており、脳卒中、脳梗塞、心筋梗塞が原因で死亡するものです。
【危険要素】
□高齢者:血管が詰まりやすく、破れやすくなっている。
□冬:外気温が低く、血管が収縮している。
□熱い風呂:血圧を急上昇させる。
そして、①風呂に入った直後の血圧の急上昇、②入浴して血管が広がった時の血圧低下による意識障害での溺死、③急に風呂から上がることによる脳貧血での立ちくらみ、というのが危険なタイミングです。
入浴事故を防止するためには、次のような入浴法が推奨されます。
①入浴前後に水分補給をする。
入浴すると発汗により血液粘度が高まるため、入浴前後に水分補給をすることにより血液粘度が高まることを防止しましょう。
②入浴前に足など心臓の遠くから順に十分なかけ湯をする。
かけ湯は、体の汚れを落とすだけではなく、温泉の性質や温度に慣らすために行うものです。
③頭に濡れたタオルを乗せる。
のぼせやすい内湯と夏の露天風呂では、冷たいタオルを頭に乗せるのがよいでしょう。
脳の血管が収縮して危険な冬の露天風呂では、熱いタオルを頭に乗せるのがよいでしょう。
④一気に長湯をせずに分割浴をする。
分割浴により心拍数の急上昇を防止しましょう。
⑤ゆっくり風呂に入ってゆっくり上がる。
入浴時には、温度・水圧・泉質による負担を軽減するために、足浴→半身浴→全身浴の順でゆっくり入浴するのがよいでしょう。
また、風呂から上がる時には、水圧から解放されて血液が体の表面や下半身側に移動するため、脳貧血を起こしやすくなります。
そのため、入浴時とは逆に、全身浴→半身浴→足浴→ゆっくりと立ち上がるという流れがよいでしょう。
⑥温冷交互浴は膝下で行う。
冷水入浴は心臓に負担がかかることから、温冷交互浴は膝下で行うのがよいでしょう。
心臓に負担をかけないという配慮であるため、冷水入浴のみを膝下にし、温水入浴は全身浴でも構いません。
8 おわりに
今回は、青森県の3つの温泉のご紹介と、温泉および入浴に関する知識・情報を共有させていただきました。
今後も引き続き、温泉に関する日常コラムを継続的に執筆・掲載して参ります。
記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2024年4月17日
※本コラムの記事内容は、記事更新日時点の法令・指針および温泉分析書の掲示等に基づくものです。記事更新日以降に法令・指針の改正・改訂および温泉成分の再分析等、その他事情の変更があった場合でも、記事内容の加筆・修正等を行うことは予定しておりません。あらかじめ、ご了承ください。
温泉記事の一覧
【執筆者:代表弁護士・木村哲也】
番号 | 年月日 | タイトル | 内容 |
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10 | 2024.7.19 | 代表弁護士の温泉紀行⑩ | 青森県の温泉その10 【温泉紹介】 ①稲垣温泉、②五戸まきば温泉、③南田温泉 【温泉解説】 ①温泉権、②温泉地役権、③温泉環境権、④宇奈月温泉事件 |
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4 | 2024.4.17 | 代表弁護士の温泉紀行④ | 青森県の温泉その4 【温泉紹介】 ①嶽温泉、②湯段温泉、③城ヶ倉温泉 【温泉解説】 ①環境省「令和4年度温泉利用状況」、②嶽温泉の源泉問題、③基本的な入浴法(全身浴・半身浴・足浴など)、④入浴事故を防止するための入浴法 |
3 | 2024.4.3 | 代表弁護士の温泉紀行③ | 青森県の温泉その3 【温泉紹介】 ①黄金崎不老ふ死温泉、②鯵ヶ沢温泉、③上北さくら温泉、④東北温泉 【温泉解説】 ①温泉の色、②湯の花、③温泉のにおい、④温泉の湯ざわり、⑤温泉の温度 |
2 | 2024.3.26 | 代表弁護士の温泉紀行② | 青森県の温泉その2 【温泉紹介】 ①下風呂温泉、②酸ヶ湯温泉、③奥入瀬渓流温泉 【温泉解説】 ①天然温泉と人工温泉、②温泉はどうやってできるか?、③源泉・元湯・引湯・かけ流し・循環について、④温泉ソムリエ検定 |
1 | 2024.2.6 | 代表弁護士の温泉紀行① | 青森県の温泉その1 【温泉紹介】 ①浅虫温泉、②谷地温泉 【温泉解説】 ①温泉とは、②温泉むすめ、③温泉ソムリエ |
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