セクハラについて

セクハラとは、セクシャル・ハラスメントの略で、簡単に言えば「性的いやがらせ」のことを言い、労働者の意思に反する性的な言動を指します。

セクハラは、地位利用型・対価型セクハラ、環境型セクハラの2つに分類されます。

地位利用型・対価型セクハラ

地位利用型・対価型セクハラとは、事業主・上司が従業員・部下に対し、職務上の地位、権限を利用し、または、何らかの雇用上の利益の対価として、性的な要求を行うこと、あるいは、事業主・上司の性的な言動に対して意に沿わない対応をする従業員・部下に、働くうえでの不利益を与える(与えようとする)ことを言います。

地位利用型・対価型セクハラの例としては、次のようなものがあります。

①従業員・部下が事業主・上司の要求を断れない弱い立場にあることを利用して、事業主・上司が性的な関係を持つことを要求する。
②事業主・上司が業員・部下に対し、良い成績・評価を与えることを条件として、性的な関係を持つことを要求する。
③業員・部下が事業主・上司の性的な要求を拒んだ場合に、事業主・上司がその労働者を解雇したり、降格・減給したり、その労働者にとって不利益な配置転換をしたりする。

環境型セクハラ

環境型セクハラとは、事業主・上司の性的な言動によって従業員・部下の職場環境を悪化させ、従業員・部下が能力を発揮するのに支障を生じさせることを言います。

環境型セクハラの例としては、次のようなものがあります。

①従業員の身体に触れたり、抱きついたりする(身体接触型)。
②従業員のいる場で卑猥な話をしたり、性的な噂を流したりする(発言型)。
③職場にヌードポスターを掲示したり、宴会で裸踊りを見せたりする(視覚型)。

パワハラについて

パワハラとは、パワー・ハラスメントの略で、事業主・上司が職務上の地位、権限(パワー)を濫用して、労働者に精神的・身体的苦痛を与え、労働者の人格を損ねることを言います。

パワハラの類型

パワハラは、次のような類型に分類されます。

①暴行、傷害(身体的な攻撃)。
②脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言(精神的な攻撃)。
③隔離、仲間外れ、無視(人間関係からの切り離し)。
④業務上不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)。
⑤能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない(過小な要求)。
⑥私的なことに過度に立ち入る(個の侵害)。

セクハラ・パワハラ問題への対策措置

企業・法人は、社内で発生するセクハラ・パワハラ問題に対して適切に対応するために、事前に必要な体制を整えておく義務、事後的に必要な措置を講じる義務、および、二次被害を防止する措置を講じる義務を負っています。

こうした措置義務を果たすことはもとより、従業員に気持ちよく働いてもらって収益を上げるためにも、事前・事後・二次被害防止の措置を取り、早期にハラスメントの芽を摘むことが大切です。

事前の措置

組織のトップが、セクハラ・パワハラの防止・根絶のメッセージを明確に発信したうえで、ハラスメントについての周知・啓発を行う、匿名で相談・苦情を受け付ける窓口を設けるといった体制を整備することが考えられます。
また、ハラスメントの加害者を懲戒処分にするには、就業規則の整備も欠かせません。

事後の措置

従業員からハラスメントの申告を受けたら、まず、ハラスメントのあったとされる日時、場所、行為の具体的態様、目撃者の有無、加害者との関係といった事実関係を詳しく聞き取ることが必要です。
証拠となる書類、メール、LINE、会話の録音データなどがあれば、コピーを預かります。
これは、被害者ではなく目撃者が申告に訪れた場合でも同様です。

事実関係を聞き取ったら、被害者の意向を確認します。
例えば、匿名のままで対応を進めてほしいのか、加害者さえなんとかなれば会社に残って働き続けたいのか、退職覚悟で徹底した対処を望むのかによって、その人にとっての最善手は変わってくるためです。

当事者、目撃者、上司が当事者でない場合には上司にも話を聞き、客観的証拠を集めたうえで、ハラスメントの有無を判断し、配置転換、自宅待機、懲戒処分等の対応を検討します。

二次被害の防止

ハラスメント問題に対応するには、関係者から事実関係を聞き取ったり、協力を求めるなどの必要があります。
そこで、こうした協力を理由として不利益な取扱いをしてはならないことを社内で周知し、匿名を希望する相談者・協力者のプライバシー保護を徹底します。

また、ハラスメント対応にあたって、加害者に事情聴取を行うと、ハラスメントの告発のあったことが加害者に伝わります。
加害者によっては告発者探しを始める人もいるので、事情聴取に対する意向を、被害者にあらかじめ確認しておきます。
加害者への事情聴取そのものを控えてほしいとの意向であれば、加害者を懲戒処分にするのは難しいことを伝えて、了解を得ておきます。

セクハラ・パワハラに対する請求

セクハラ・パワハラ問題が発生すると、ハラスメントを行った当人のみならず、その人を雇用していた企業も、被害を受けた(受けている)従業員から、損害賠償請求を受ける可能性があります。

なぜなら、企業は、従業員が安全に働けるように配慮する義務(安全配慮義務)を負い、また、人を使って収益を上げている以上、その人が仕事に関連して発生させた損害についても責任を負うべき(使用者責任)とされているからです。

損害賠償の内容は、次のとおりです。
(1)慰謝料
(2)医療費、カウンセリング費用など
パワハラ・セクハラにより、うつ病、適応障害などにかかった場合は、医療費、カウンセリング費用などを請求することができます。
(3)逸失利益(勤務を継続することで得られたであろう給料相当額)
セクハラ・パワハラにより、休業、退職を余儀なくされた場合は、逸失利益を請求することができます。
(4)弁護士費用(弁護士に依頼した場合。(1)~(3)の合計額の10%が目安)

また、ハラスメントによって従業員がうつ病になったり、自殺したりすると、労災認定を受けることもあります。

セクハラ・パワハラをめぐる紛争の解決方法・手続

セクハラ・パワハラをめぐる紛争が発生した場合に、それを解決するための手続は、交渉、訴訟(裁判)、労働審判などがあります。
詳しくは、「●労務問題(紛争)の解決方法・手続について」のページを参照ください。

【ご相談ください】
職場は、性的欲求を満たす場でも、ストレスを発散する場でもなく、仕事をする場所です。
企業・法人としては、生産性向上のためにも、まずはハラスメントのない快適な職場環境を整える必要があるでしょう。
そして、もし労働者との間で、ハラスメントをめぐる法的紛争が発生した場合には、専門家である弁護士にご相談いただきながら、適切に対応していくことが必要です。
セクハラ・パワハラ問題についてお困りのことがあれば、お気軽に八戸シティ法律事務所にご相談ください。
ご依頼いただければ、お客様の代理人として、セクハラ・パワハラをめぐる紛争の解決に向けて、交渉、訴訟(裁判)、労働審判などにあたります。

(ご注意)
八戸シティ法律事務所では、労務問題については企業・法人側のサポートに注力しているため、労働者側からの労務問題に関する相談・依頼は原則としてお受けしておりません。
ただし、労働災害(労災)の問題に関しては、労働者の人身傷害という重大な結果を伴う事案であり、他の労務問題と比較して労働者側のサポートの必要性が高いと考えていることから、企業・法人側、労働者側とも相談・依頼をお受けいたします。

●労務問題に関する弁護士費用

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●未払い残業代問題について
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